注意!住宅ローン借り換えで贈与税が発生。
(2022年8月23日時点でのブログ記事の情報です。ご覧いただいた時点で販売状況や法規制の内容等が変更となっている場合がございます。詳細は、その都度ご確認をお願いいたします。)
こんにちは、藤島住宅の大目(おおめ)です。
お住まい購入する時に、ご夫婦の共有持分で登記する方も多いかと思います。
ひと言で共有と言っても、ご夫婦ともに住宅ローンを利用する場合や、または、住宅ローンやフラット35での借り入れはご主人のみで、自己資金の一部に奥様名義の現金を充てる場合など、それぞれの状況により異なるかとは思います。
共有名義での住宅の購入は良くあることですが、数年経って当初の住宅ローンやフラット35から借換えをする場合に『贈与税』が発生してしまう場合がるので注意が必要です。
お住まいをご夫婦共有持分で所有している方が借り換えをするからといって、必ず贈与税が発生するわけではありません。
例えば、購入時の自己資金として奥様のお金を使う場合は、全体の価格に対して奥様のお金の割合に応じて持分登記します。
この場合は、奥様は現金のみの提供ですので住宅ローンはご主人お一人の借入となり、借換えはご主人のみで行うこととなり、奥様の持分は変更有りませんので贈与税の対象とはなりません。
仮に、住宅ローン審査時に奥様の所得をご主人の所得と合算して世帯所得とした場合でも、債務者はご主人お一人となります。契約価格の100%ローンを組むなど奥様名義の資金の利用が無ければ、持分は全てご主人名義での登記となります。
借換えの審査の際には、奥様が持分を持っているので物上保証人として金融機関への審査申込書への署名押印など一緒に手続きが必要になります。※物上保証人とは、自分以外の人の債務を、自分の財産(主に不動産)をもって担保(保証)した人のことをいいます。
では、贈与税が発生する可能性があり注意が必要な場合とは!
ご夫婦各々で借入をする所謂”ペアローン”で借入をしている場合や、フラット35での借入れの審査の時に奥様の所得をご主人の所得にプラスする”合算”での審査で、登記上奥様が連帯債務者として持分が登記されている場合などです。
簡単な例でお話しすると、まず、ご夫婦ペアローンで借りている場合です。
”ペアローン”とは、仮にお住まい購入のために全体で4,000万円の住宅ローン借入が必要な場合、ご夫婦共働きで一定の収入があり、住宅ローン控除なども踏まえて各々借入をする場合です。
金額の割り振りはその時々により事情に沿って決めますが、自分名義の借入については主債務者となると共に、相手方の連帯保証人となります。
数年が経ち、ご主人の残債が2,500万円、奥様の残債が500万円になったとして、ここで借換えする時に、残債の合計が3,000万円なので、当初もご主人が3,000万円のローン審査は通ていることもあり、ご主人一人が債務者になる様に奥様のローン残債分も含めた全額での借換えをすると、奥様分のローン残債をご主人が肩代わりしたことになります。原則、共有持分登記はそのまま維持されるので、ご主人から奥様への資金贈与が生じたと判断される可能性があります。
これは、なんとなく贈与税の対象となりそうだなと想像がつきます。
そして、そもそも、金融機関で借換えの相談の段階で「ご主人お一人名義での借換えは出来ません。」と断られることもあります。
次に、フラット35など連帯債務者として奥様が持分登記されている場合は、注意が必要です。
連帯債務者とは、債務(ローン借入)に対して主債務者と同じように全額責任を持ちます。これは、債権者に対しては各々全額の責任負担ですが、債務者と連帯債務者との間では持分割合を決めます。これにより、どちらかが全額返済した場合に、返済した者は、片方の債務者に持分割合に応じた金額の求償権があります。
ですので、フラット35で借入した場合、借入額に対してご主人の収入では審査の枠に収まらないため奥様の収入を合算して審査となったときなど、最初はただ収入のみ計算上合算しただけというイメージで手続きが進みますがが、最終的には連帯債務者となる奥様の持分を決め、お住まいの引き渡し時に所有権を登記する際に、その持分が登記されることになります。この時の持分割合は任意で決められます。
変動金利など通常の住宅ローンの審査において、奥様の年収をご主人の年収と合算して世帯年収から借入額の審査をして借入を行ったとしても、奥様が現金の資金負担をしない限り持分を持つことはありません。
この場合、債務者はご主人お一人となります。この感覚があるために、フラット35で合算を利用して審査し借入した時に連帯債務になるとは頭では理解していても、借換えする場合のリスクまで想像がつきにくいですね。
仮に数年経って、この先も金利上昇はなさそうだと思い変動金利に借換えしようとした時に、奥様が連帯債務者として持分登記されているので、借換え額に対し奥様の持分割合の額は、奥様のローンとして借入するのが前提となるのです。
この場合、奥様がそれなりの収入があれば問題ありませんが、パートでの収入で扶養範囲内に抑えていたり、何かしらの事情で仕事を辞めてしまい収入が無い場合など、借り入れ審査の条件を満たせないと借換えの申し込みが出来ない可能性があるのです。
ただし、この辺りは金融機関により審査基準が違うので、必ず100%借換えが出来ないというわけではありませんが、希望の金融機関が利用できず予定より金利が高くなってしまう可能性が出てしまいます。
フラット35で収入合算での審査を利用した上で持分を決める際に、特にルールが決まっていないので、「取り合えず、半分ずつにしておこうか!」なんて安易に決めてしまうと、借換えの際に、残債の半額分のローンを借り入れ出来るだけの年収が必要となってしまうのです。
この持分を決める際に、今後どのような計画でローンを返済するのか、借換えの可能性がるかなどを見通した上で、極力借換え時に贈与税が発生してしまうリスクを抑えるようにしなくてはなりません。
この際に一つの目安となるのが、贈与税の『暦年課税(基礎控除)』です。贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
ですので、上の図の例の様に、最初の借入額に対し奥様の持分割合が110万円以下になるような持分で登記しておけば、借換え時には多少なりとも残債は減っていますから基礎控除額の110万円を超える心配はありません。
ただし、念のための注意として、基礎控除の110万円は、贈与を受ける側の1年間の合計額です。
もし、同じ年に他の人から50万円の贈与を受けていたとしたら、残りは60万円分となります。また、同じ人から2回に分けて贈与を受ける場合も、1年間の合計額が110万円以下となります。
それぞれの人からの贈与が110万円以下。。。ではないので、ご注意ください。
贈与税の課税を回避する方法は。。。
さてここで、今借換えをご検討中の方で、上述でのリスクを抱えてしまった方は、絶対借換えは出来ないのか?
いくつかの回避策はありますのでご安心ください。
方法としては、まず最初に、もし資金の貯えがある場合として、ペアローンなら奥様分の残債を完済出来れば問題ありません。
連帯債務の持分での共有なら、繰上げ返済をすることで結果的に奥様持分の金額が減り、ローン審査の枠に収まるか基礎控除の範囲に収まれば十分可能性があるかと思います。
少し資金が足りない場合、110万円以下であればご両親などからの資金援助をプラスして解決できるか確認します。
ご両親からの援助の中に、『相続時精算課税制度』の利用があります。相続時精算課税制度とは、父母や祖父母が子または孫に対し、贈与財産が累計2,500万円までは非課税となります。それ以上の場合は一律20%の贈与税が課税されます。
基礎控除の110万円では足りない場合に、ご両親や祖父母からの援助が可能であれば選択肢として可能性はあります。
ただし、一旦『相続時精算課税』を選択すると、同じ贈与者からの贈与については暦年課税(110万円の基礎控除)が使えなくなり、受贈について確定申告も必要となります。
『相続時精算課税』に利用には他にも条件がありますので詳細については、国税庁HP【相続時精算課税の選択】をご確認ください。
次の方法としては、奥様の持分をご主人に贈与してから借換えを行います。この場合贈与を『負担付贈与』といいます。奥様分のローン返済が残っているので、そのローン返済の負担も合わせて持分を贈与することになります。
仮に、不動産全体の価格に対し奥様の持分割合の価格が1,000万円で住宅ローンの残債が900万円だとすると、差額の100万円がプラスになるので贈与税の課税対象となりますが、110万円の基礎控除以下ですので、実際は非課税となります。
注意が必要な点としては、不動産の価格について、通常の贈与の場合は、相続税評価額をもとに計算され市場の価格より低く抑えられますが、負担付贈与での計算に用いるお住まいの価格は、実勢価格(市場の取引の価格)での計算となります。
また、現住宅ローン借入金融機関への確認や、所有権移転登記などの費用が発生します。
いくつかの事例と共にご紹介しましたが、あくまでも一般的なことしかお伝え出来ません。それぞれ皆様の状況により詳細部分の条件が違うことで、問題点や解決策も異なります。
最終的には、税務署や金融機関へ必ずご相談をお願いします。
当初、変動金利で借入する方は、そもそもかなり低い金利設定なので、借換えの可能性は低いかもしれませんが、勤続年数が短いとか諸費用分も借入したため適用金利が高くなってしまう方などは、状況に応じて借換えの検討をしてみるのも良いかと思います。
月々の返済額は大きく変わらなくても長い目で見た時に十分メリットが生まれる場合もあります。
簡単なシミュレーションも作成しますので、お気軽にお問い合わせください。